ライトノベル レビュー

スーパーダッシュ文庫: 2011年6月 新刊

ファンタジーですが、主人公はニートです。
でも、それだけじゃ終わらない物語が始まる!!
禍竜戦争と呼ばれる大乱に見舞われたガルダ正統帝国。
戦が終わり、国が平和を取り戻しつつあるそんな頃、
聖職者見習いのアンナは、毎日自分を見つめる青年の姿に気づいた。
その青年・ユリウスが何か悩みを抱いているのだと勝手に思い込んだアンナは、持ち前の行動力で、彼の自宅を強襲する。
妹のような少女・サロメを働かせ、自分は働きもしないユリウスに怒るアンナは、彼を更正させることを誓うのだった。
しかしそんな彼らに、運命と過去が戦いを引き連れて迫る!
竜と鋼と魔女のファンタジー、時々コメディ。
物語がついに始まる!!

 部屋の真ん中にある囲炉裏で、一人の少女が鍋をかき混ぜていた。アンナよりも年下で、十代の前半、少なくとも半ばを過ぎてはいないように見える。
 夕飯のものか、鍋から漂ってくる香ばしく、刺激的な匂いに、アンナの腹が鳴る。
「あの子……。妹さんでしょうか?」
 黒い衣服に身を包んだ青年とは違い、その少女は真っ白だった。
 後ろで編んだ長い髪は色が抜け落ちてしまったように白い。その髪は細く、窓から入るわずかな陽光に透けて輝く。その光はどこか儚いものをアンナに感じさせた。
 肌を出さない青年とは違い、身軽な印象の衣服もまた白い。
 そこから伸びる四肢はあまりにも細く、触れれば壊れてしまいそうだと、アンナは思う。
 服の下に覗く肌は血の気が薄く、穢れない新雪のようだった。
 その横顔はあどけなく、あまりにも可愛らしい。
 頬にかすかに落ちた朱の色と、宝石のように鮮やかな緑色の瞳だけが、白い少女にわずかな色彩を与えている。
「しかしな、ユリウス。おぬし、ちょっとは手伝ってやろうとか、帰ったら夕飯の支度を済ませておいたりとか、そういう心遣いはないのか?」
 鍋を混ぜ、味見などしながら、白い少女は青年に声をかける。
 アンナはあの青年の名がユリウスだということを今知った。

超巨大兵器AAEは世界平和の使者か、
人類滅亡の最終兵器か。その謎がついに!!
世界七箇所に突如現れたAAEのパイロットとしての資格を示す門章を持つ生徒が、世界中から集められた星立・真宮研究所附属AAE高校の初代星徒会長に就任したキューこと橋良九星。実は、AAEを操ることが出来ないのに、女の子にはモテモテだ。同級生の綾瀬川椛、月緒・メイ・シルバーライアン、アムリネス・13世・アイシス、ナディア・ヴェルディ・シュバルツシモンがキューのために副会長の座を巡る激しいバトルを繰り広げることに。高校生活は順調かに思えたが、AAEの存在を巡り先進各国が不穏な動きを見せ始める。超巨大兵器AAEの存在理由とは何か? 世界平和の使者か? それとも人類滅亡の最終兵器か? そして高校生たちの未来は!! その謎を知る天才科学者真宮ソフィー村本は、キューに衝撃の真実を打ち明けた!!

「だが――――民間でもなく、政府でもなく、真宮ソフィー村本である私が求めることは、これからも少年が、強く気高いきみでありつづけることだけだ」
「………強い? なんだそれ。別に強くも気高くもねえよ俺は。今日の演説でも、あがっちまって危ないところだったよ」
「自分の価値にまだ気づいていないのか。こいつめ。まあ、しばらくはそれでもいいか」
先生は俺にデコピンをくらわせて微笑んだ。なぜデコピン。
「ま、話の続きはメシ食いながら聞くぜ」
だが校庭から食堂に転がり込んだ俺たちの見たものは――――。
「せーのっ、橋良九星くん、星徒会長就任、おめでと――――っ!」
薄暗かった食堂に一斉に灯りがともり、それと同時にクラッカーの破裂音が押し
せた。
「うあっ!? えっ、えっ、えっ、えっ、………なに?」
目をぱちくりさせる俺の周りでは、よく知る顔ぶれが拍手の雨を降らせていた。
「おめでとう少年。今日はささやかながら就任祝いの席を用意した。急なことなので大した物は用意できなかったが、存分に楽しんでいってほしい」
白衣の魔乳、真宮先生が俺の背中を押しながらそう言った。

最弱が最強を虜にする。
アキトを慕う三人の美少女と始まった共同生活。
彼女たちの想いが向かう先には...!?
選定者。それはこの世界に墜ちた神や悪魔をその身に宿し、力を行使する者。
悪魔・ゼファによって"魅惑"の力を不本意ながらも得てしまった高校生・アキトは絶対的な力の称号『王冠』の名を冠された三人の美少女と騒がしくも、そこそこに平穏な共同生活を送っていた。
しかし、ある日それは一変する。
ルヴィの"英雄"の力が失われてしまったのだ。
世界のバランスにも影響する一大事に、
なんとかこの事実を隠そうとするアキトたちだったが、綻びは確実に広がっていた。
一方、当事者のルヴィは力がなくなったことに戸惑いを覚えつつも、初めての体験に心を躍らせていた...!?
荘厳なる恋と戦いの物語。第二幕があなたを虜にする。

 そして、鏡の前に立った。
 つぶさに観察していた草薙萌恵の魅力を、なんとか自分のものにできないだろうかと考えたのだが、とりあえず表情を真似てみようと思いついたのだ。
 鮮明に覚えているうちに、この鏡を使って取り込んでおこうという算段だった。
 まずは、じっと自分の顔を見てみる。心なし不機嫌そうな表情をしている。そこにいつも式典で繕う笑みをうかべてみた。不自然なところはないが、萌恵の笑顔とはまったく違う。
 彼女はもっとこう、口角を上げて、目元を緩めて......
(......こ、これは、酷いな)
 奇怪になってしまった自分の表情に、思わず目尻が引き攣った。
 似ても似つかない表情。
 ため息とともに両肩が落ちる。
(なにをやっているんだ、私は......)
「どうしたの?」
 と、後ろから声がかかった。

もう一度絆を結びたい。
幼少の頃に出会った“お姉さん”のことが忘れられなかった少年・ヒロは、ひょんなことから彼女との再会を果たす。だが、そのお姉さん――アテナ――は姿がまったく変わっておらず、昔の記憶を失っていた……。親代わりで剣の師匠でもあるカジタのアドバイスに従い、アテナの記憶を取り戻すため、ヒロはオーパーツ〈イージス〉を求める冒険の旅に出る!
大人気ソーシャルゲーム『大革命!! バトルレジスタンス』が初のノベライズ化。

 アテナは自分の胸元を軽くはだけさせた。
「ちょ、ちょっとアテナ……なにを」
 慌てて手で目を覆うとしたけど、出来なかった。
 アテナの膨らみの端に、入れ墨のような模様があった。
「これも見覚えない?」
 アテナは自分の胸に刻まれた紋章を僕に向けた。
 前に会った時は、なかったと思う。
 どうしてそこにあるのかわからない。
 でも、それがなにかは僕にもわかった。
「それって、帝国の紋章……」
「そっか。……あいつら、乙女の柔肌になんてことするのよ」
 ぐいっ。
 アテナは自分の衣服を引っ張って紋章を露わにする。
 つまり、胸の膨らみが露わに……。
「うわわ、お願いだから、隠して! 隠して!」
「……え?」
 アテナの視線が、僕が指さす先に向かう。
「ヒロのヘンタイ!」
 アテナは慌てて胸元を隠した。

とわいすあっぷっ! 2

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嫁と愛人は語る。
「あの子、手強すぎる~!?」
京都から女の子と見まごうばかりの美少年・白木久陽向がやってきた。「お兄ちゃん」と無邪気に好意を寄せる陽向と、それを困惑しながらも微笑ましく受け入れる悟。魔王・アリスと勇者の娘・涼子はその仲睦まじい様子(?)に女性としての立場危機感を覚える。だがそんな陽向の一人旅はある使命を帯びていたのだ――。
嫁・愛人に加え、恋人(?)候補まで登場し、悟の争奪戦は加熱してゆく!?

「お弁当、ぼくも……ここで一緒に食べてもいいかな?」
「よし陽向くん、僕が食べさせてあげようかな? ほら、こうして」
 僕は陽向くんの身体を抱き込むようにして、膝の上のお弁当の包みを開いて、箸を取って――子供に母親がするみたいに、後ろから食べさせてあげようとする。
「お兄ちゃん……ちょっと恥ずかしい、お姉ちゃんたちが見てる。でも、でもお兄ちゃんがしてくれるならぼくも……あ、あーん」
「かわいいなぁ陽向くんは、よし……じゃぁ次はアスパラロールだ、嫌いなものないよね、陽向くん?」
「……ヒナタがサトルに羨ましい事されてるっ、くぁぁぁぁぁぁ! くそう、生まれ変わったら『サトル大好きー』とか言える素直な女の子になるわよ、来世の私は絶対! そ、その時まで覚えておきなさいよサトルぅ!」
「なぜ来世なのですか! どうして明日からすると言えないのですか、向上心のない発言ですよアリスさん!」
「そんな簡単にチョロく手の平を返せるよーな、分かりやすい女じゃないのよ、私は!」

ラビッツの前に現れた気弱な美少女。彼女は実は…!?
温泉旅行に出かけた私立戦車隊・首なしラビッツの面々。
久しぶりの休暇に羽を伸ばす一行には、
妖精のような儚い美しさをもつ少女が同行していた。
少女の名はアリス。
ドクターのもとでメイドとして働く彼女は、
テオドーレの事件で研究所から脱出し、
ラビッツに救助を求めた人物だった。
ドクターの命でラビッツと同居することになったアリスだが、
なぜかみんなから距離を置くように振る舞う。
アリスと友達になりたいと思うニーナも、
彼女から強烈に拒否されてしまう。
これにはアリスの過去と驚くべき秘密が関係していて…?
第9回SD小説新人賞大賞シリーズ、第3弾!!

 なにせ、とにかく可愛いの一言に尽きる。体を包んでしまうような……長くてふんわりとした黒髪は艶やかで、つぶらな丸い瞳は宝石のようにキラキラしている。肌は透き通るように白くて、赤く上気した頬と、桜色の唇をなおのこと綺麗に見せていた。体を隠すタオルから覗いている手足は、細くて小さくて、触れたら壊れてしまいそうだった。
 まるで名工の作った人形か、あるいは月明かりの下で育った妖精のような……とても浮世離れした儚さが感じられる。そんな彼女が怯えた表情をして、所在なさそうにキョロキョロとしていたら、ついつい声を掛けたくなってしまうのも無理はない。
 ニーナも何か話しかけようと思ったけれど、上手に言葉を選ぶことが出来なかった。どんな言葉をかけたとしても、彼女の心を傷つけてしまうような気がするのである。美しい人形も、おとぎ話に出てくる妖精も、そっとしておかないといけないのだ。
 でも、そこは頼れる戦車長である。
 脱衣所を出た先で突っ立っているアリスに、明るくドロシーが声をかけてくれた。
「せっかくの貸し切り状態なんだからさ、ほら、入って来なよ」
 すると、アリスはあたりを見回して、
「あの……私、あっちのお風呂に入りますから、」
 答えるなり、小さい歩幅でパタパタと湯気の向こうへ駆けていった。
 遅れてサクラが気づく。
「……あっちにあるやつ、水風呂ですけど」