ライトノベル レビュー

生まれた時から世界最強たることを義務付けられた少女が、有る日突然ただの女の子になる。
世界のパワーバランスさえも変えかねない"英雄"の力を有するルヴィ・アルスレイは、突然その力を失ってしまった。
突如一般人同然となってしまった彼女が体験する日常はとても貴重なもので、その状況に次第に甘えてしまう。

折りしも、ルヴィたちの通う高校では文化祭が行われており、その準備に奔走したり、本番で行われるイベントに参加したり。
当然、主人公である沙羅姫アキトをめぐって、ルヴィと同じ『王冠』の称号を持つ2人の選定者、霧ノ宮彩姫とラース・ペルナリティの3人でデート権を巡って競争したりもする。

能力が有るときは気にも留めなかった重い荷物を代わりに持ってもらったり、いつもは護っている立場なのに護られてみたり、とアキトに対するルヴィの気持ちは高まっていくばかりなのに、それに反比例するようにアキトの方はゼファの力で虜にしたルヴィの気持ちに応える事が出来ずにいる。

買い物に出かけたり、文化祭に参加したりと突如普通の女子高生の生活に放り込まれたルヴィのリアクションが一々可愛らしい。
そしてその裏でなんだかんだ言いながらルヴィのフォローをしている彩姫もなかなか健気。ラースさん、アンタはちょっと自重しろ。

大事な様で実はスケールが小さかった事件だけれども、これが今後のルヴィにとって大きな出来事になりそうな、そんなストーリーだった。
ルヴィは一つの決断を下した事によって成長することが出来たが、悩めるアキトは2ヵ月後にどういう選択をするのだろうか。

レビュー:2011/7/12

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最弱が最強を虜にする。
アキトを慕う三人の美少女と始まった共同生活。
彼女たちの想いが向かう先には...!?
選定者。それはこの世界に墜ちた神や悪魔をその身に宿し、力を行使する者。
悪魔・ゼファによって"魅惑"の力を不本意ながらも得てしまった高校生・アキトは絶対的な力の称号『王冠』の名を冠された三人の美少女と騒がしくも、そこそこに平穏な共同生活を送っていた。
しかし、ある日それは一変する。
ルヴィの"英雄"の力が失われてしまったのだ。
世界のバランスにも影響する一大事に、
なんとかこの事実を隠そうとするアキトたちだったが、綻びは確実に広がっていた。
一方、当事者のルヴィは力がなくなったことに戸惑いを覚えつつも、初めての体験に心を躍らせていた...!?
荘厳なる恋と戦いの物語。第二幕があなたを虜にする。

 そして、鏡の前に立った。
 つぶさに観察していた草薙萌恵の魅力を、なんとか自分のものにできないだろうかと考えたのだが、とりあえず表情を真似てみようと思いついたのだ。
 鮮明に覚えているうちに、この鏡を使って取り込んでおこうという算段だった。
 まずは、じっと自分の顔を見てみる。心なし不機嫌そうな表情をしている。そこにいつも式典で繕う笑みをうかべてみた。不自然なところはないが、萌恵の笑顔とはまったく違う。
 彼女はもっとこう、口角を上げて、目元を緩めて......
(......こ、これは、酷いな)
 奇怪になってしまった自分の表情に、思わず目尻が引き攣った。
 似ても似つかない表情。
 ため息とともに両肩が落ちる。
(なにをやっているんだ、私は......)
「どうしたの?」
 と、後ろから声がかかった。

novelauthor: 雪野 静

4086306190

2011/6/24

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