ライトノベル レビュー

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ラビッツの前に現れた気弱な美少女。彼女は実は…!?
温泉旅行に出かけた私立戦車隊・首なしラビッツの面々。
久しぶりの休暇に羽を伸ばす一行には、
妖精のような儚い美しさをもつ少女が同行していた。
少女の名はアリス。
ドクターのもとでメイドとして働く彼女は、
テオドーレの事件で研究所から脱出し、
ラビッツに救助を求めた人物だった。
ドクターの命でラビッツと同居することになったアリスだが、
なぜかみんなから距離を置くように振る舞う。
アリスと友達になりたいと思うニーナも、
彼女から強烈に拒否されてしまう。
これにはアリスの過去と驚くべき秘密が関係していて…?
第9回SD小説新人賞大賞シリーズ、第3弾!!

 なにせ、とにかく可愛いの一言に尽きる。体を包んでしまうような……長くてふんわりとした黒髪は艶やかで、つぶらな丸い瞳は宝石のようにキラキラしている。肌は透き通るように白くて、赤く上気した頬と、桜色の唇をなおのこと綺麗に見せていた。体を隠すタオルから覗いている手足は、細くて小さくて、触れたら壊れてしまいそうだった。
 まるで名工の作った人形か、あるいは月明かりの下で育った妖精のような……とても浮世離れした儚さが感じられる。そんな彼女が怯えた表情をして、所在なさそうにキョロキョロとしていたら、ついつい声を掛けたくなってしまうのも無理はない。
 ニーナも何か話しかけようと思ったけれど、上手に言葉を選ぶことが出来なかった。どんな言葉をかけたとしても、彼女の心を傷つけてしまうような気がするのである。美しい人形も、おとぎ話に出てくる妖精も、そっとしておかないといけないのだ。
 でも、そこは頼れる戦車長である。
 脱衣所を出た先で突っ立っているアリスに、明るくドロシーが声をかけてくれた。
「せっかくの貸し切り状態なんだからさ、ほら、入って来なよ」
 すると、アリスはあたりを見回して、
「あの……私、あっちのお風呂に入りますから、」
 答えるなり、小さい歩幅でパタパタと湯気の向こうへ駆けていった。
 遅れてサクラが気づく。
「……あっちにあるやつ、水風呂ですけど」

novelauthor: 兎月竜之介

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2011/6/24

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