ライトノベル レビュー

待ちも待ったり、前巻『涼宮ハルヒの分裂』から4年越しの続編である。
その内容もまた、完全に分裂からの続きとなっており、驚愕(前・後編)のみでは話の筋が分からなくなっている。
驚愕(前)の冒頭が第四章から始まっている事からもそれが窺える。
本編を読む前に、『分裂』を再読して話の筋を思い出しておく必要が有るので注意が必要だ。

今回の驚愕は前・後編の分冊になっているわけだが、実質的には分裂から数えて3分冊である。
分裂の途中から、二つの物語が交互に進行する様になっていた。
一つは何の事件も起こらず、変わりに新学年を迎えたSOS団が......と言うよりハルヒが、新入生をスカウトし入団試験を行うα編。
もう一つは佐々木を神としようとするグループがSOS団と対立するβ編である。
微妙な関連性を残したまま交互に語られる物語はやがて......と、繋がっていく。

涼宮ハルヒシリーズは、昨今の流行の萌えテクスチャのバックボーンに、タイムトラベルを主軸としたSF要素を持っている。
そのSF的お約束は、有る程度の展開の予想を可能にしてしまっているのだけれども、その着地の仕方、決着のつけ方に面白さがある。
ちょうど体操の演技の着地の見事さを見るような感じだ。

4年のブランクが有ったものの、ハルヒの傍若無人さも、キョンのくどいくらいな独特の語り口調も、古泉の胡散臭さも健在である。
しかし、残念ながら病床に臥せっている長門と、いつも通り蚊帳の外なみくるさんの二人はやや出番が少なかった感じがする。
変わりに存在感を放っていたのは、謎のハイスペック新入生渡橋ヤスミと、キョンの中学時代の同級生・男性口調が独特な佐々木の二人だ。
それぞれα編・β編のキーパーソンを担い、佐々木にいたっては後編の表紙も飾っている。
彼女らがいかにしてキョンの日常を振り回すのか、是非その目で確かめて欲しい。

メディアで取り上げられていたほどに盛り上がったような実感はなかった......実際、予約なんてしなくても発売日数日後に書店で普通に買えた......けれども、やはり読んでみると流石に角川スニーカーの看板タイトルだけあって面白かった。

レビュー:2011/6/30

カテゴリ:

『驚愕』前後巻の2冊に加え、谷川流書き下ろしショートストーリー、いとうのいぢ描き下ろしイラスト、初めて明かされる制作秘話など豪華内容を収録した特製小冊子「涼宮ハルヒの秘話」が付いてくる!

novelauthor: 谷川 流

4044292108

2011/5/25

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