ライトノベル レビュー

テンプテーション・クラウン

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突如、異能を神や悪魔から与えられた存在、選定者。その中でも世界のパワーバランスを変えてしまうほど強力な力を持つ存在には『王冠』と言う称号が与えられる。
そして今や複数の大企業は、その『王冠』を保有する事で国家の権力すら超えて世界を牛耳る存在になっている。そんな世界。

何の能力も持たない一般人だった少年、沙羅姫アキトは、ある日突然、ゼファと名乗る悪魔に取り憑かれる。つまり、選定者となったのだ。
しかし、ゼファが言う事には、アキトが得た能力はとてもささやかで弱い力なのだという。しかし、その力は弱いながらも致命的な効果を持っていた──

と言う、いわゆる最弱が最強を倒す、と言う展開の一種なのだろうか。
最強ヒロインに最弱主人公が惚れられると言うのも結構有るが、このテンプテーション・クラウンはその両方なのだ。
主人公アキトの得た能力は、最強たる『王冠』たちに、悟らせる事なくその心に働きかけて無条件で惚れさせる、と言うもの。
一般人とは掛け離れた生き方をしてきた彼女たちは、突然訪れた初恋に戸惑いながらも、一生懸命アキトへとアプローチをしていく事になる。

もちろん、『王冠』たちはいずれ劣らぬ美少女。
特にメインヒロインである"英雄"ルヴィ・アルスレイは自分に課せられた義務と、アキトへの想いとの板挟みになりながら、結局アキトを選んでしまう溺愛ぶり。
しかし、ゼファの能力によって押し付けてしまったその気持ちに、アキトは素直に応える事が出来ない......。

一生懸命なルヴィの姿がとても可愛らしい。そしてそれに応えたくても応えられないアキトの葛藤が話の肝になっている。。
戦闘シーンもなかなか迫力のある描写が多く楽しめた。
既に2巻が刊行されていてそちらも読了済みだが、1巻の時点で物語の区切りとして4ヶ月と言う時間が設定されている。
この4ヵ月後に一体どうなってしまうのか、楽しみな作品である。

レビュー:2011/7/12

カテゴリ:

「貴方を護りたい。......私を、貴方の傍にいさせてほしい」
少女の誓いが少年の世界を変えた。
あなたを魅惑する物語が始まる。
選定者。それはこの世界に墜ちた神や悪魔をその身に宿し、力を行使する者。
高校生・アキトはある日、悪魔・ゼファの力を得る。
ゼファの力はとても弱く、密やかなものだったが、アキトに劇的な変化をもたらすことに。
その力"魅惑"は最高の選定者・『王冠』の名を冠される美少女・ルヴィの心を虜にしてしまい、 さらにはルヴィの変化を良く思わずアキトに接触する『王冠』彩姫にまでにも影響が及ぶ。
アキトはどうにか力を解除して、現状を正常化しようとするのだが、 なし崩し的に少女たちとの同居生活が始まってしまう。
一方、ルヴィや彩姫に匹敵する"魔王"が街に来訪する。その秘めたる目的は...!?
荘厳なる力が導く物語が、今あなたを魅了する。

「彩姫よ」
 と、アキトに言った。
「これから私の事はそう呼びなさい。親愛を籠めてよ。あと、敬語も禁止。同い年だもの。それって変でしょう? その二つの条件が呑めるのなら、いいわ。止めてあげる」
「......わかったよ、ええと、彩姫」
 おっかなびっくりに名前を呼ぶと、彼女はふわっとした笑顔を浮かべて、
「ふふ、光栄に思いなさい。私を呼び捨てにしていいのなんて、この世界で貴方くらいなんだからね」
 なんて、弾んだ声で言った。
「むぅ」
 と、小さな唸り声が微かに聞こえる。
 ちらりと見ると、ルヴィが難しい顔で唇をやや尖らせていた。
 そして顔をあげた彼女は言った。
「わ、私も、ルヴィと命令するように呼んで欲しい」

novelauthor: 雪野 静

4086305968

2011/2/25

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